「精神科は楽」は本当?

「精神科は楽」という情報をよく目にしませんか?

精神科(単科)病院で数年働いています。

数年働くなかで「楽じゃないだろう、精神科」と思う機会が時々ありました。

個人の感覚になりますが、同じ疑問を持っている方の参考になると嬉しいです。

  1. 「精神科が楽」の実際
  2. 「ノー楽・精神科」だと思うところ
  3. 楽かどうか ~わたしの見解~

目次

「精神科が楽」の実際

ネット上で挙げられている理由としては

・医療的処置が少ない

・急変が少ない

・残業が少ない

が、多いと思います。

では、働いてみた感想です。

※精神科スーパー救急病棟を数年、療養病棟を数年勤務しています。

・医療的処置が少ない……総合病院に比べると少ない

・急変が少ない……そうでもない

・残業が少ない……確かにほぼナシ

どう医療的処置が少ないの?

採血、点滴、画像検査、創傷処置は普通にあります。

ただ頻度は少なく「え~、今日採血3人もおる~多い~」みたいな感じです。

吸引、経管栄養、血糖測定、バルン留置もあります。

胃管留置久しぶり?初めて?なんで、一緒にお願いします(泣)」みたいな感じです。

ただ専門的な処置(ドレーン管理など)や特殊な薬剤(抗がん剤や昇圧剤)を用いた点滴とかないです。

精神科単科になると院内には精神科医と内科医ぐらいしかおらず

他科の疾患疑い、集中的な治療が必要となれば

近医に紹介、入院となり

ある程度安定してから病院に戻ってくるためです。

麻薬の管理:ガンに罹患し治療せず見取りの方針となった方に対して、オキノーム、フェントステープなど使用する機会が増えてきてます。緊張します。

急変って少なそうだけど?

精神科の前が循環器病棟だったので「少ないだろう」と思っていました。

確かに少ないのですが

特徴的かな、と思う危ない状態を挙げていきますね。

水中毒:過剰な水分補給(1日3L短時間に1L以上)により、低ナトリウム血症を引き起こした状態。

精神科の薬の副作用で口渇感が強くなり水を多量に飲んでしまう方が時々います。めまいや頭痛などが主な症状ですが、重症化すると嘔吐、意識障害などの症状が現れるんですね。ナトリウムは体内の水分バランスを調整する機能を担っており、バランスが崩れるため様々な症状が出てしまうんです。

てんかん発作:脳の異常から体の一部がぴくぴく動く、全身が硬直する、意識がなくなる等症状が生じる。

症状は突然始まり、1~2分程度で止まるを繰り返します。30分以上続くと脳に重い障害を残す可能性が高くなると言われています。発作が頻回であったり発作時間が長いと注射、重症であれば近医に紹介しています。

窒息:鼻や口の閉塞、気道の閉鎖により呼吸ができなくなった状態。

抗精神病薬の副作用や高齢化による嚥下機能の低下から、わりと院内でコードブルーが鳴ると食事が詰まって窒息とか多いですね。また認知症の方には異食行為もあり、注意が必要となります。

救急搬送:総合病院では「ICUまで搬入できたら、ちょっと気が楽かな」とか思ってたんですけど(ICUの方すみません)。対応しつつ救急車を呼び、どこかのERまで対応続けるっていうのが緊張感ありますね。

残業は少ない?

少ないです。

・入院はあるも手術とかなくほぼ時間通りに業務が進む

・患者全員参加のOT活動時間中に記録などを集中してできる

残業ナシの空気感があり「帰り~帰り~」と言ってくれる

ちなみにわたしの病院は前残業もありませんでした。

※病棟の年齢層によりますが「早く来て夜勤さん手伝おーよー」みたいな感じもあったり……

もちろん、全くゼロではないですよ。業務終わり際に入院とかありますからね。

外出:患者によっては、「家に服を取りに行きたい」「銀行に行きたい」「退院前に役所とか回りましょう」とか外出する機会があります。その時職員も同伴する場合があります。内容によっては残業です。

「ノー楽・精神科」だと思うところ

では、楽じゃないと思うところです。

・暴言や暴力の対応

・法律で定められていることが多い

暴言・暴力って怖いよね

妄想や幻聴など精神症状が生じると

病気により作られた世界と現実が分かりにくくなり

自己を守ろうと(←実際は安全な環境)

手や足が医療者に向かってきます。

また、「バカ・あほ」「ブス・ばばあ」「刺すぞ」など

言葉の刃も向かってきます。

気持ちの切り替えが上手な人が精神科に向いているとも言われますが、

肉体的・精神的に負担ですよね。人間ですからね。

評価の指標:暴言・暴力が減り、保護室からも出れたとなると「精神状態が落ち着いてきた」と治療の評価にもなります。また口癖のように「ばか」「あほ」と言っていた人が何も言わないと「え、調子悪い?」と観察項目にもなると思ってます。気持ちの切り替えとともに、どう受け取るか、自分に向けられたものとしてじゃなく、評価の指標と思うと、ちょっと、少し気分が楽です。

法律で決められていることが多い

詳しい内容は省きたいと思います。

説明もざっくりなのでイメージとして読んでください。

精神保健福祉法に定められていることが多いです。

精神保健福祉法:精神障がい者の医療および保護

        精神障がい者の社会復帰と自立を促進

        精神障がいの発生予防と国民の精神的健康保持・増進に努める。

この法律によって、

どういう状況で誰同意の入院なのか、

必要最低限の行動制限(隔離や身体拘束)となっているのか、

説明を実施しており、ちゃんと記録・同意書があるのか。

沿った対応が日々業務内でできているのか。

……など、決まりごとが多く

なんか神経質になってしまうんですよね。

必要なことなんですけどね。

指示の確認:精神保健指定医による指示が必要となります。指示なく看護師の単独で行ってしまうと大問題となってしまうので、この患者はどういう状況でどんな指示が制限があるのか、逐一確認が必要です。

楽かどうか ~わたしの見解~

身体的負担は少ないと思います。

処置が多いわけではなく、検査や手術の送り迎えもなく、

院内を早歩きで動き回ることがないからです。

精神的負担は人によると思います。

「わたしのミスで危ない状態になったらどうしよう」

という、緊張感を(わたしは)感じないのですが

「暴言いわれてショック」「暴力されると思ったら近づけない」

という、不安や恐怖心は感じます。

「仕事だから」「病気がそうさせる、つらいね」と割り切れたらいいかもしれません。

「精神科は楽」という情報は全くのウソではないと思います。

なので転職を考慮したとき、

「負担の少ない場所」「プライベートを充実させたい」など

働きたいスタイルがあり、優先事項として高いのであれば

精神科病院勤務も選択肢に入れていいのではないかと思います。

太る?:精神科就職時に「あんまり動かないからね、太る人多いんだよ~」と脅されました。確かに気を抜くと体重増加かもしれません。ただストレスは少なかったのか、暴飲暴食の発生率は減り、休日にトレーニングに行く余裕も出てきたので現在無事キープです。

精神科から転職:精神科から身体科に転職するのが難しい、もよく聞きます。業務の流れなど異なる部分が多く、転職後困ると思いますが、全くダメではないです。また記事であげたいなあ。

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